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長野県栄村のご紹介

今回は長野県北部にある栄村という村の事例をもとに木質バイオマス発電について取り上げていきたいと考えています。栄村といえば2011年3月に長野県北部で発生した最大震度6強を観測し、村内の住宅700棟が損壊するという、甚大な被害を乗り越えた村というイメージをもつ方も多いのではないでしょうか。

栄村の人口は2000人ほどで、村の面積の86%(23,475ha)が森林で占められていることから、主な産業は農業や林業であり豊富な木材を有しています。
今後、木質バイオマス発電導入によって見込まれる年間発電量は、396kWhと見込まれており、これは栄村の全世帯数(900世帯)が消費する電力を充分にカバーできる電力を発電できる計算になるとされ、村の新たな産業として注目されるとともに、村の雇用を生み出すことにも期待が高まっています。

木質バイオマス発電

biomas
木質バイオマス発電は、主に森林から切り出してきた未利用木材や端材などを材料に木質チップが作られます。そして材料となる木材を燃焼または発酵させ、発生した蒸気を利用してタービンを回し、電気を作ることができるというものです。

火力発電の燃料として用いられる石炭や天然ガスなどと似ていますが、バイオマスは動物や植物などの生物によって生み出される有機性のエネルギー資源の総称であるため、上記の化石燃料とは一般的に区別されます。

栄村の事例では、森林組合の製材工場の敷地内に木質チップの製造設備を導入することで近隣の発電所や温泉施設などに燃料の供給をすでに開始しており、かつて震災時に201人の避難者を受け入れた「北野天満温泉」では木質チップを使ったボイラーの導入によって災害に見舞われた際でも燃料の確保が可能となり、電源遮断時であっても施設の稼働を実現しました。

また、ZEエナジーとの協定によって4月からバイオマス発電所の工事が着手され、同年12月頃には発電所の運転を開始できる見込みとされています。

バイオマス発電の今後

バイオマス発電は化石燃料の価格高騰や変動を理由に、今後更なる注目が集まる分野と言えるでしょう。
豊かな森林資源を有する地方ならではの強みを活かし、これまで利用されてこなかった未利用材などの資源をエネルギーとして蘇らせることは、手つかずになりがちな森林環境の整備や保全を通して新たな雇用が創出されることにもつながります。

今回は栄村を例にバイオマス発電について取り上げました。限りある資源を無駄にせず、循環させることで、私たちを取り巻く発電の在り方も変わってくるのかもしれません。


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