電力自由化に際してはさまざまなメリットがあり、また同様にさまざまなデメリットもあるとして指摘がされています。

消費者からするとメリットの方にばかり目が行きがちですが、制度の本質を理解するためにはデメリットについても考えておく必要があることは確かです。
こうしたことを考えるには「電力自由化が実施された社会においてはどういった仕組みで市場が動くのか」ということについて考えることが必要です。

目次

  1. 電力自由化市場においてメリットが生じる仕組み
  2. 電力自由化市場においてデメリットが生じる仕組み
  3. 結局どうすれば良いのか

電力自由化市場においてメリットが生じる仕組み

まずは消費者側が最も知りたいと考える「メリットが生じる仕組み」について考えてみましょう。ここで言うメリットというのは電力価格の引き下げやサービスの質の向上といったことが挙げられるのですが、これは「競争」による効果が大きいです。

仮に現在電力市場にはかつてから電力会社として経営していたA社と、新規参入してきたB社がいるとしましょう。

消費者はこれまでA社と契約していたわけですから、電力自由化が行われてもB社の提供するサービスの質が低いのであればA社との契約を続行します。
しかしここでB社は携帯電話を販売している会社でもあるため「携帯電話と一緒に契約すれば電気代が安くなる」というプランを打ちだし、その価格はA社よりも3割低い価格にしたとします。

こうなると消費者はA社からB社に切り替える理由が生じますから、新規参入する業者は「価格を安くして契約を取ろう」という考えで動くわけです。
サービスの質についても同様で、電力自由化市場ではこの顧客の奪い合いによって消費者側にメリットが生じるのです。

電力自由化市場においてデメリットが生じる仕組み

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では逆にデメリットが生じる場合はどういった仕組みがあるのかについてですが、ここでは先ほどのA社とB社で価格競争が激化したとして仮定して考えましょう。

価格引き下げによる顧客の奪い合いが過熱すると、二つの会社は限界となる金額まで価格を引き下げて競争を仕掛けます。
しかしこの限界となる安さが続くと、どちらも会社運営のコストとなる余剰電力の確保を後回しにする可能性が高いです。

そうなると猛暑で電力需要が増加した場合、余剰電力が無いため現状の電力で何とかしなくてはならず停電が引き起こされます。

これはカリフォルニア州で実際に起きた事例であり、競争の激化は安定供給の犠牲にもつながりかねないのです。
また企業の倒産リスクの存在もありますので、過剰な競争は電気の安定使用を阻害する要因になるとして考えなくてはなりません。

結局どうすれば良いのか

さて、では結局こうした問題をどう解決するかというと、これはやはり政府のある程度の介入が必要となります。

実際日本では電力会社の経営悪化に備えてフォロー制度の導入も明言していますので、自由化と言っても完全に政府が手を出さないというわけにはいかないのです。
市場原理と自由化のバランスは慎重に判断する必要があります。