2016年4月より始まった電力の小売り自由化ですが、テレビ等の宣伝でその言葉を耳にすることが多くなったとはいえ、その実態について理解していない人も少なくありません。

そこで、従来の電力小売りとの違いや、メリット・デメリットなどを具体的に説明していきます。

従来の電力小売りでは何故駄目だったのか

これまで、電力の小売りは地域電力会社が独占的に提供してきました。
それは、安定した電力の供給をするための設備投資には、多額の資金が必要であることもあり、仕方がない一面もありました。

しかし、競争相手がいないことで、価格を下げる努力も、新たな技術開発をするモチベーションも少なくなり、そのことで消費者に負担がかかるというマイナスの面があったのです。

大規模工場などに向けた電力の自由化自体は、90年代の中頃から始まったのですが、2000年代になっても新規参入した業者の割合は、全体のシェアからすると極わずかで、自由化の効果は出てきませんでした。
そこで、電力小売りも含めて自由化しようという流れになったのです

電力の小売り自由化がもたらす恩恵

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誤解してはいけないのは、電力の小売りが自由化されたからといって、従来の地域電力会社が使えないわけではありません。もちろん、今までどおりの地域電力会社を使えますし、他の地域やガス会社、家電メーカー、商社などが立ち上げた新規参入の業者を選んでも良いのです。

このことで、消費者が最も恩恵を得るのは、契約によっては料金が安くなることです。
何故料金が安くなるのか具体的に説明すると、電力を供給するためのインフラは、すでに従来の地域電力会社がつくっています。
つまり新規参入の業者は設備投資にかかる費用を回収する必要はなく、送電線の使用料を支払えば良いということになります。

コストが下がれば、必然的に消費者に請求される料金も安くなり、競争の原理が働けば地域電力会社も値下げをしてくるわけです。
このように地域電力会社と新規参入の業者との関係がサービスや省エネ技術などに波及していけば、電力市場は活気づいていくことが期待されます。

電力の小売り自由化で気をつけるべき点

電力の小売り自由化は良いことばかりという説明が多いですが、料金が安ければそれだけ電力会社の得る利益が減ってしまいます。それがどのような事を引き起こすのかというと、デフレが進んだ時、牛丼チェーンが各社値下げ競争をして、体力を削りその結果現在も大きな後遺症に悩んでいるような状況になる可能性もあります。

電力網は、現代社会を動かすための血管のようなもので、もし疲弊した電力会社が電力を提供することができなくなれば、大きな問題です。
今後、そのような事態を防ぐための官民が具体的な課題を話し合って規制緩和が行われる見込みです。